
氷菓 第17話。
文化祭クライマックス、十文字事件の真相。
以下感想
真相
十文字の最後の犯行、そして十文字事件の真相。十文字事件は古典部(こ)から校了原稿(こ)が奪われて終了。
えるのラジオ出演によって古典部に注目が集まる中、
校了原稿が爆発をするというド派手なクライマックス。
まぁ祭りのシメとしては格好の演出なんだろうけど・・・。
里志の携帯の着信後に犯行が起きたこと、
そして爆発後の里志の迷いない対処を見れば、
誰でも「古典部の中に犯人、もしくは共犯者がいる」と考えるでしょうね。
えるの図らずも媚び売りまくりなラジオでの宣伝もありますし。
案の定古典部への犯行については古典部内に共犯者がいた。
奉太郎は十文字事件の真相にたどり着いており、
「氷菓」完売のため犯人と結託をしていた。
今回の奉太郎は、「愚者のエンドロール」の際の
入須先輩を思わせるダーティっぷりですよね。あの事件の入須先輩と同様、
結果を出すために選んだ奉太郎の選択は
決して間違ってはいなかったと思います。
ただ、このことをもしえるが知ったら、
第11話の奉太郎と同じように怒るんだろうなぁ。
まぁ悪気はまったくなかったとしても、
ラジオで媚を売ってしまったえるも奉太郎と大して変わらないか。
十文字事件の犯人は総務委員長の田名辺治朗で、
十文字事件はそれ自体がある人に宛てられたメッセージだった。
抜けていた「く」は「陸山宗芳(く)からクドリャフカの順番(く)が失われた」
「カンヤ祭の歩き方」に「夕べには骸にの作者名」など、
確かに今回の事件は真相につながるヒントは用意されていましたね。
納得納得、かつ満足のいく真相です。
期待
天才に対して「期待」をしてしまう者たち。里志は奉太郎の真相解明現場を目撃。
「データベースは結論を出せない」
敗北感と劣等感を隠すような言い方で、
普段以上に虚しく響きますねこの言葉は。
漫研の先輩は、「夕べには骸に」を読んだことはなかった。
彼女も奉太郎の才能に嫉妬する里志と同様、
友人である「夕べには骸に」の作者の才能に「期待」していた。
第13話での彼女の名作論は、
里志にとってのデータベース論みたいなものだったんですね。
もし摩耶花が「夕べには骸に」の代わりに
「ボディトーク」を持ってきていたらどうなっていたかが気になりますね。まぁきっと先輩をさらなる劣等感を与える結果になっていそうだけど。
そして今回の犯人、田名辺治朗も、
上記二人と同じく天才に「期待」をする者だった。
彼にとっての天才は陸山宗芳で、
陸山宗芳に彼のメッセージは届くことはなかった。
ぶっちゃけ彼の犯行は遠回りすぎて、
ただの自己満足で終わってしまいましたね。
まぁ行き場を失った感情を何かにぶつけたかっただけなんだろうけど。
天才との圧倒的な実力差のあまり、天才に「期待」をしてしまう者たち。
彼らの無力感はそりゃもうよくわかるんですけど、
そもそも自分以外の誰かに「期待」をすること自体が気に入りませんね。本当に自分が好きなことで、誰かに勝ちたいと思うなら、
天才に憧れ、劣等感と絶望感に苛まれる暇もないくらい、
自身を高めるために猛進するしかないと思います。
この手の問題は結局は当人のモチベーション次第だと私は信じて疑いません。
まとめ
今回は文化祭クライマックス、十文字事件の真相。
「愚者のエンドロール」と同様に「才能」をテーマとした、
ほろ苦い虚しさの残る印象深いクライマックスでしたね。
事件の真相も納得の内容だったし、まさに大満足です。
さて、「文化祭」という一大イベントが終わり、
この作品はどのような展開を迎えるのでしょうね。
次に古典部に訪れる事件はどのようなものか、気になります。
※追記 8/14 2:00
(コメントへの返信です。長いので追記とします)
上記の「自身を高めるために猛進するしかない」について。
あまりにも言葉足らずな文章だったのでその補完です。
この文章には「努力すれば天才に勝てる」という意図があるわけではなく、
「結局、才能への劣等感を克服する術は努力しかない」
という意図がありました。
才能というのは決して後天的に得られはしない、
だからこそ才能に対して劣等感を感じ、
いつまでもくすぶってしまうのは正直言って時間のムダです。
それに、たとえ結果的に天才に敵わなかったとしても、
本当に全力を尽くしたのならある程度割り切ることができるはずです。
これはかつて「先天的な才能がモノを言う競技(陸上の短距離走)」
に挑戦し、まるで結果を出せなかった私の経験則なんですけど。
なので全力を尽くしたものの奉太郎に敵わなかった里志が、
三人の中では一番割り切れているのかなぁと思ったり。
コメントでおっしゃられていた通り、ある程度割り切れているからこそ、
里志は奉太郎と一緒にいられるのでしょうから。
田名辺に関しては他力本願な感じが気に入りませんが、
純粋に「『夕べには骸に』の続編が読みたい」という
プラスの意味での「期待」も強かったのだろうと勝手に推測。
これで彼が漫研所属で真剣にマンガに取り組んでいるのだったら、
話はまた全然変わってきますけどね。
で、問題は漫研の先輩ですね。
彼女は劣等感に苛まれるのを恐れて、
「夕べには骸に」を読むことすらできない。
しかも友人の転校が、
より一層彼女を現実と向き合わせることを困難とさせている。
今のまま「夕べには骸に」から逃げ続ければ、
いずれマンガへの情熱も、友人との関係性も完全に失うでしょう。
まぁ自身の才能の無さと向き合うのは勇気のいることなので、
現状のまま、マンガを楽しみ続けるのももちろんアリでしょうね。
せめて、ただ現実から逃げるのではなく、
自分の意志で後悔のない道を選んでもらいたいところです。
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異能というのは文字通り特殊能力なので、後天的に得られないものだと思います
そこそこの才能の人が凄く努力して天才の業績を上回る事は可能で、現実にもそんな事例は沢山あります
でも、それと天才のみ持ちうる才能自体を羨むことや、天才でしか成し得ない高みを「期待」するのは似て非なるなのではないかと
今回の話では里志は概ね区別つけてるけど、成長著しい奉太郎に置いて行かれそうで焦ってしまっただけだと思います
対して、河内先輩は里志のように区別つけられてないから友人に電話も出来ない状況なのでは
里志も割り切れてなかったり受け入れ切れてなかったりするから時々辛いけど、奉太郎に出来なくて自分にしか出来ないことがあるのも分かってるから一緒にいられるのでしょうし