2011秋、そして2012春に放送されたFate/Zeroの総評です。
私的殿堂入り作品なのでこの総評はシリーズ化していきます。
印象深いキャラの多い作品だったので、
まずは各陣営についての雑感からスタートです。
今回はマスターとサーヴァントの関係が最悪だった
セイバー陣営とランサー陣営について。
セイバー陣営
まずは(一応)主人公格であるセイバー陣営について。
この陣営を一言で表すと「使命」ですね。冷酷非道な殺し屋と誠実潔白な騎士王様という
相性が悪いにも程がある組み合わせ。
相互理解がまったくなされなかったどころか、
わずか3回のやりとり(しかも一方的な命令)しか行われなかったという、
とても主人公格とは思えない仲の悪さでした。
まぁ見事なまでに真逆な性格の持ち主だったので、
互いが互いのキャラクター性を存分に引き立てていたと思います。
そんな正反対の切嗣とセイバーですが、
この二人には共通点も多数あったと思います。
まずは「決して手の届かない理想を追い求めていること」
切嗣は「恒久的な世界平和」という
人類が存在する限り絶対に訪れないであろう理想を追い求め、
セイバーは「滅びの運命にある祖国ブリテンを救う」という
歴史そのものを変えてしまうおうという理想を追い求めていた。
どちらも「聖杯の奇跡」に頼らない限り絶対に成就不可能。
しかもどちらももし成就したあかつきには、
今ある世界を根本から壊しかねない危険な願いでもあります。
「聖杯の奇跡」なんて不確かなものに自身のすべてを委ね、
最悪の結末に陥る可能性に関しては完全に思考停止していた。
これこそがセイバー陣営の悲劇の元凶。
切嗣やセイバーの「弱さ」といってしまえばそれまでなのですけど、
二人の境遇を考えるとムリもなかったかなぁという印象です。
そしてこの二人のもう一つの共通点は、
「その理想の成就のために私情を殺していること」です。
切嗣は最愛の人(アイリ)を犠牲にしてまでようやく聖杯を勝ち取ったのに、
聖杯が逆に多くの人を殺すと知った途端、
躊躇うことなく聖杯を破壊するという徹底ぶり。
セイバーは序盤は騎士道精神(笑)で迷走しまくりでしたが、
終盤ではかつての親友ランスロットをその手で殺してまで
聖杯を求めるようになりました。
この二人は自らの使命を遵守できるだけの、
感情を殺して理想へと猛進できるだけの「強さ」があった。
切嗣は
第18話で父親を殺した時から
「少数を切り捨て多数を救う天秤の役割」を自らに課し、
セイバーはおそらくブリテンの王になったその時から
「ブリテンを救う騎士王の役割」を自らに課した。
自らのこれまでの行いに多大な罪悪感があり、
だからこそもう後には退けないといった印象でもありますね。
総じて切嗣とセイバーの魅力は、
「人間らしからぬ強さと人間らしい弱さの混在」ですね。こうして彼らの魅力を取り上げてみると、
なんだかんだで主人公らしいキャラだったのではないかなぁと思えます。
てなわけでムダに真面目な考察はこのぐらいにして、
ここからはこの二人についての気楽な感想。
切嗣については情け容赦のない戦術にシビレましたね。
特に
第6話での爆破テロに、
第14話、
第16話の龍之介とケイネス殺害が素晴らしかったです。
第24話でのvs綺礼もカッコよすぎでした。
悲劇を繰り返し経験することによって培われたその渋さに
心奪われましたね。
セイバーについては
最終回での
「絶望に打ちひしがれゴメンナサイを連呼している様」
が最高に萌えました!w
いやー、アーチャーがセイバーを
嫁という名の愛玩動物にしたい気持ちがよくわかるなぁww
あと忘れちゃいけないのが切嗣を守る二人の女性、
アイリスフィールと舞弥ですね。
人間みたいな人形と人形みたいな人間、
この二人の間に確かに芽生えた友情は、
この作品で数少ない清涼剤の一つでした。
ランサー陣営
次は特に悲惨な結末を迎えることになったランサー陣営について。
この陣営を一言で表すと「誇り」ですね。誇り高いエリート魔術師と誇り高いイケメン騎士という、
パッと見相性の良さそうな組み合わせ。
しかしソラウという一人の女性の存在が、
この二人の関係をどうしようもなく悪化させてしまいましたね。
まぁソラウ一人が悪かったわけでは決してなかったわけなのですが。
ソラウをめぐる嫉妬心から、
どこまでも献身的なランサーを信用しようとしなかったケイネス。
彼にはランサーの主君として当然責任があるでしょうね。
しかし当のランサー自身にも
ケイネスから信用を得るために努力を怠っていた節があると思います。
「新たな主と誇りある戦いに挑むだけが望み」
聖杯戦争に参加さえできればあとは何もいらないという言い分なのですが、
ぶっちゃけ聖杯戦争に参加さえできればマスターは誰でもよかったのでは?
とも思えてきますね。
ケイネスがランサーをただの偶像としか見ていなかったのと同様に、
ランサーもまたケイネスをただの偶像としか見ていなかったのでしょう。
ケイネスに関しては、魔術師としては超一流なのでしょうけど、
その内面は全マスター中最も真っ当な人間だったと思います。
第5話でのビビリっぷりや、
第8話での慢心っぷり、
第16話での自身の誇りへの諦めの悪さなど、
良く言えばものすごく一般的な人間らしい、
悪く言えばものすごく小物っぽい性格の持ち主でした。
極めつけは最期を迎える直前の行動、
ケイネスは最終的に自身の誇りよりもソラウの命を選んだ。
魔術師の中の魔術師、例えば時臣ならこの状況、
間違いなく妻の葵を切り捨てて自身の誇りを選び取るでしょうね。
まぁこの決断によって私の中でのケイネス株が
最期の最期で急上昇したのですけど。
全マスターの中で誰よりも真っ当な人間であったケイネスは、
「そもそも聖杯戦争に参加するべき器ではなかった」
そしてランサーはケイネスを主君としてしか見ようとせず、
ケイネスの本質を見抜くことができなかった。だからランサーは「憎悪を撒き散らしながら消えていく」という
誇り高い騎士とはかけ離れた最悪の結末を迎えたのでしょう。
勝手にケイネスに期待を抱いたのがランサー最大の失敗かな。
こう書いてみるとランサー陣営の悲劇はどう考えても必然でしたね。
まぁケイネスの転落っぷりといいその衝撃的な最期といい、
印象に残るいいキャラたちだったと思います。
特に
第4話でのランサーの槍さばきはホントカッコよかったですし、
最期以外はイケメンそのものでしたしね。
まとめ
てなわけでまずはマスターとサーヴァントの関係が最悪だった
セイバー陣営とランサー陣営についてでした。
次回は逆にマスターとサーヴァントの関係が良好だった
ライダー陣営とキャスター陣営についてです。
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第14話、第16話の龍之介とケイネス殺害が素晴らしかったです。
あのホテル爆破は、衝撃的でしたね~ww
「魔術師の幻想をぶち殺す!」という感じで、魔術師の常識を見事に粉砕した戦術でした。
ケイネス先生の工房とやらは、かなり強力だったんでしょうが、『魔術師殺し』の前には無力でしたねーww
キャスター陣営とランサー陣営を倒したやり口は、正にダークヒーロー的というか、ダーティヒーロー的というか...
禁書の一通さんのような、圧倒的な力の暴力とは真逆の狡猾で抜け目のない戦術でしたね。容赦がないのは同じですけど(一通さんは、最近甘いですが)
そういえば、切嗣さんと一通さんも真逆ですね。大切な一人のために世界を敵に回すか、世界のために大切な人を犠牲にするか。
個人的には、一通さんのほうが好きですが、切嗣さんも応援したくなるものがありましたね。
>セイバーについては最終回での
「絶望に打ちひしがれゴメンナサイを連呼している様」
が最高に萌えました!w
あの時だけ普通の少女に戻ってましたからね~w
これがギャップ萌えというものか...ww
ぶっちゃけ、ランスロットたちの前でも、こういう素の自分を見せていればよかったんでしょうけど、それができない生真面目の性格だったんですよねー...
そこが長所でもあるんですけど、親友の前でも、本来の自分をさらせないというのは悲しいですね。その結果が、あの結末なんですから、やり直しつくなる気持ちもわからないではないですね。絶対にやってはいけないことですが...
>ケイネスに関しては、魔術師としては超一流なのでしょうけど、
その内面は全マスター中最も真っ当な人間だったと思います。
確かにケイネス先生は良くも悪くも『普通』ですね。聖杯戦争に参加した目的も、武功を得るためという、ある意味ウェイバーと大差のない平凡なものですし。普通の感性の人間が、名家の神童として生まれ、挫折知らずに生きてきたのがケイネスなんだと思います。
ケイネスとウェイバーは、能力や家柄が違うだけで、根っこは意外と似ていたのかもしれませんね。ウェイバーも、当初は自分を過信した、ちょっと嫌な奴でしたし。
ライダーの元で成長したウェイバーと、ランサーとの不仲が原因で一気に転落したケイネス(ランサーと上手く連携してれば、切嗣さんといえど、簡単には付け込めなかったはず)は対照的ですが、最後に誇りよりも愛する女性を選んだケイネス先生はカッコよかったですね。残念ながら報われませんでしたけど...